清水靖晃 IQ179 [CD]
清水 靖晃はジャズ・サクソフォーンの演奏に秀でた気鋭の音楽家として表舞台に登場する。78年に実験的ロック・バンド「マライア」を結成。81年にリリースした清水靖晃のサード・アルバム「IQ179」は、ポストパンク/ニューウェイブとジャパニーズ・テクノとジャズが融合したようなアヴァンギャルド作品で、当時の東京でしか生まれ得なかった当時の先端実験サウンドとなった。参加したマライアのメンバー、清水靖晃(Sax)笹路正徳(Key)土方隆行(Gtr)山木秀夫(Drs)渡辺モリオ(Bass)村川ジミー聡(Vo)に加え、ゲスト・ミュージシャンとして渡辺香津美(Gtr)坂本龍一(Syn,Drs)吉田美奈子(Cho)の豪華ゲストが参加。多彩な音楽表現の可能性を探るべくユニークな活動を通して、清水は絶えず創作領域の限界を突破することに喜びを見出していた。後に坂本龍一と共に出演したナム・ジュン・パイクによる東京・ニューヨーク・ソウルを結んだ衛星通信プロジェクト『バイ・バイ・キップリング』(1986年)などの活動に、そうした清水の創作上の探求心がうかがえる。
「LIZARD」
「CLOUD 9」
「PUZZLE 34」
「LITTLE “L”」
「SHASHIN」
Bob Dorough Just About Everything [CD]
金子晴美の初リーダー・アルバムをプロデュースして、当時話題をまいた弾き語りの名手、ボブ・ドローのアルバム「Just About Everything」は66年にリリースされた、幻の名盤と言われている。56年にリリースされ、ドローによって歌詞が追加されたチャーリーパーカーの「ヤードバードスイート」のバージョンをマイルス・デイヴィスが気に入り、その後に62年のマイルス・デイヴィス「ソーサラー」で2曲を歌った事で有名になり、マイルス・デイヴィスの作品でボーカルパフォーマンスを行った数少ないミュージシャンの一人となった。63年には作詞を担当した「カミン・ホーム・ベイビー」がグラミー賞2部門にノミネート。73~85年にはアメリカの国民的子供番組『スクールハウス・ロック』で音楽を担当し楽曲を提供、「スリー・イズ・ア・マジック・ナンバー」で一世を風靡した。八面六臂の活躍を続け、ダイアナ・クラールやジェイミー・カラム等の後進からも敬愛を集めている。抜群のスウィング感の持ち主であると同時に、稀代のユーモリストとしても知られる。
「Better than anything」
「Don't think twice, it's all right」
「Baby you should know it」
「'Tis Autumn」
おまけでボブ・ドローの映像「Devil May Care」
金子晴美 & Ron Carter I'M WALKIN' [CD]
88年にリリースされた「I'M WALKIN'」は、金子晴美だけでなくロン・カーターとの共有名義盤で、ロン・カーターはウッドベースの演奏だけでなく、プロデュース、アレンジまで担当、ファースト・アルバムの「I Love New York」にもハンク・ジョーンズ、グラディ・テイトなどと共に参加していた。ジャズスタンダードのカバー中心で、選曲や編曲も良い上に、曲の設定にも無理が感じられず、実にリラックスした雰囲気。彼女の歌唱技術については以前から定評があり、黒っぽいフィーリングとスケールのある歌声、ボブ・ドローに鍛えられた英語の発音により、スタンダードをスイングするリズム感も抜群で、その乾いたブルージーさは、日本人離れしている。
参加したミュージシャン達はグラディ・テイト(vo)エリック・ゲイル(g)ジーン・バートンシーニ(g)シダー・ウォルトン(p)ルイス・ナッシュ(dr)グラディ・テイト(vo)ロン・カーター(b)など。.
「I'm Walkin'」
「Moanin'」
「In A Mellow Tone」
「What A Little Moonlight Can Do」
Toni Harper & Oscar Peterson Qt. Toni [CD]
天才シンガー、トニ・ハーパー、8歳のときにダンサーとしてデビューし、カーネギー・ホール等にも出演。キャブ・キャロウェイの後ろでも踊ったことがあるそうです。40年代後半にR&Bナンバー「Candy Store Blues」がヒット、エド・サリバン・ショウの前身にあたるテレビ番組「Talk of the Town」にも出演。55年にジャズ・シンガーとして再出発を果たしたデビュー盤「Toni」。オスカー・ピーターソン(p)ハーブ・エリス(g)レイ・ブラウン(b)アルヴィン・ストーラー(dr)のクァルテットをバックに弱冠18歳のトニ・ハーパーの歌唱が楽しめる歴史的にも貴重なアルバム。スタンダード・ナンバーを中心とした構成だが、中でもミュージカル「パル・ジョイ」の中の「I Could Write A Book」のちに映画化されフランク・シナトラも歌っている、モダンジャズ・マン達が好んで取り上げる「Gone With The Wind」ガーシュインの傑作「A Foggy Day」ロジャース、ハートのコンビによる「You Took Advantage Of Me」などを収録、オスカー・ピーターソン・クァルテットの卓越した安定感のある演奏に支えられたトニ・ハーパーの安定した歌声は素晴らしい。残念ながら29歳の若さで引退してしまった為にあまり知られていないが、50年代のトニ・ハーパーの艶やかな歌声に酔いしれたい。
「I Could Write A Book」
「Gone With The Wind」
「A Foggy Day」
「You Took Advantage Of Me」
大野えり eri [CD]
ジャズ・シンガー大野えりのサード・アルバム「eri」は80年にリリースされた。ファースト・アルバムは佐藤允彦プロデュース、セカンド・アルバムは杉本喜代志プロデュース、そして本作は、大野えりの良き理解者である大徳俊幸(key)のプロデュースによるサウンド・アレンジで彼女の世界観が色濃く現れたアルバムとなる。初のオリジナル曲やスティーヴィー・ワンダー作曲のマイケル・ジャクソンのナンバー「I CAN'T HELP IT」やスタイリスティックスのナンバー「PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND」やキャロル・ベイヤー・セイガーのナンバー「SWEET ALIBIS」その他にもハービー・ハンコックのナンバーなども収録している。ジャズボーカルファンのみならずロック・ポップス好きな人にもマッチする佳曲ばかりで、80年代に隆盛を極めた日本ジャズの名門レーベル、BETTER DAYSらしい作品である。
参加ミュージシャンは大徳俊幸(key)杉本喜代志(g)清水靖晃(sax)マイク・ダン(b)ジェリー・エディ(dr)横山達治(per)初山 博(vib)など。
「INTRODUCTION」作:大野えり/大徳俊幸
「I CAN'T HELP IT」作:S.Wonder / S.Greene
「SWEET ALIBIS」作:C.B.Sager / M.Hamlish
「PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND」作;L.Creed / T.Bell
笠井紀美子 Round And Round [CD]
ジャズ・シンガー笠井紀美子が77年にシティー・ポップに挑戦した名盤「Tokyo Special」の翌年78年にリリースした「Round And Round」はサンフランシスコで録音された。プロデュースとコンダクトは24カラット・ブラックのデイル・ウォーレンで演奏にも参加、その他にもヘッド・ハンターズのメンバーだったポール・ジャクソン(b)、ビル・サマーズ(Per)ベニー・モウピン(Sax)なども参加している、ハービー・ハンコックの名曲「Chameleon」のヴォーカル・ヴァージョンではハービー・ハンコック自身も参加している。ジョン・ルシアンの隠れ名曲「And It All Goes 'Round And 'Round」クインシー・ジョーンズやジョージ・ベンソンも取り上げている「Everything Must Change」クルセイダースの名曲でマイケル・フランクスもカヴァーしている「Chain Reaction」なども収録している。選曲の良さやに加え、今まで築き上げてきた彼女の雰囲気を崩さず自然な形で表現しているアレンジの良さで、前作のアルバム以上に新鮮な彼女の良さが発揮されている。笠井紀美子とハービー・ハンコックは翌年に再共演、あの金字塔のアルバム「バタフライ」を生むことになる。
「And It All Goes 'Round And 'Round」
「Chameleon」
「Don't Forget You Are」
「Chain Reaction」
「Everything Must Change」
Mari Nakamoto III 中本マリ with 鈴木勲 & 渡辺香津美 [CD]
哀愁のジャズ・ヴォーカリスト中本マリはワタナベプロ所属の4人組女性コーラスグループ 「ザ・スカーレット」でプロ活動を始め、70年にジャズ・ヴォーカルに転向。73年にアルバム「Unforgettable」でソロデビューする。そして スリー・ブラインド・マイス レーベルで3人目の女性ジャズシンガーとなる。「Unforgettable」「Little Girl Blue」に続くスリー・ブラインド・マイス レーベル第3弾のアルバム「Mari Nakamoto III 」は バックに鈴木勲(b)、渡辺香津美(g)のみという至高のデュオをバックに迎え、スウィートなハスキー・ヴォイスで、バラード主体のインティメイトな心地良い歌唱を聴かせている。渡辺香津美もジャズのオーソドックスなフォーマットで演奏している、とてもこのような小編成の演奏とは思えない、大きな広がりのある演奏をしている。敬愛するダイナ・ワシントンも歌い、バックの2人の名演も光る「What A Difference A Day Made」や巨匠ヘンリー・マンシーニが担当したマルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン主演による映画「Sunflower」や渡辺香津美とのデュオでしっとりと歌うミッシェル・ルグラン作の「What Are You Doing The Rest Of Your Life?」などを収録。ジョー・パスとエラ・フィッツジェラルドのデュオ・アルバムにも匹敵するぐらいの内容で、和製ジャズ・ヴォーカルの名盤である。その後、中本マリは78年にイングジャーナル誌 読者人気投票でボーカル部門第1位となり以降8年連続首位をとる。
「Sunflower」
「What A Difference A Day Made」
「What Are You Doing The Rest Of Your Life?」
「Just Friends」
憂歌団 生聞59分 [CD]
憂歌団は大阪の高校の同級生だった木村秀勝(ヴォーカル、ギター)と内田勘太郎(ギター)のアコースティックデュオとして出発したが、レコードデビューした際は花岡憲二(ベース)、島田和夫(ドラムス)を加えて四人組になっていた。憂歌団は木村の破天荒なヴォーカルと内田のギターを売りにライブを重ねブルースバンドとして異例とも言える幅広い人気を獲得する。憂歌団3枚目のアルバムとして77年にリリースiされたのが、初のライブアルバム「生聞59分」だった。東京と地元の京都で行われた数回のライブの音源から編集された物らしい。一曲目の「マディ・ジャンプス・ワン」はタイトルからも分かる様にマディ・ウォーターズ作のアップテンポなインストナンバー。パチンコ~ラン・ラン・ブルース」はライブで大人気の曲。「シカゴ・バウンド」はファーストアルバム収録曲で、シカゴに来てもいい事ありゃあしねえ…といった、木村がマディ・ウォーターズみたいに一旗揚げようと田舎からシカゴにやってきた男に成り切って唄う。「おそうじオバチャン」は、彼らのデビューシングルとして発売されながら、職業差別とのクレームが付き放送禁止になったいわく付きの曲。最初から最後まで、ライブ会場にいるような臨場感が味わえる最高のライブ・アルバムだ。憂歌団は好きなブルースをブルースファン以外にもアピールする楽曲を目指していった。その柔軟な音楽性は80年代に入ってもより独自性を発揮する事になる。その後憂歌団は98年に一度活動停止を発表するが木村と内田、花岡に亡くなった島田に代わりRCサクセションの新井田耕造が参加して断続的な活動は続けている。
「マディ・ジャンプス・ワン」作曲:Mckinley Moganfield
「パチンコ~ランラン・ブルース」作詞・作曲:木村秀勝 編曲:憂歌団
「シカゴ・バウンド」作詞・作曲:尾関真 編曲:憂歌団
「おそうじオバチャン」作詞:木村秀勝/沖てる夫 作曲・編曲:憂歌団
山梨鐐平 NICOLA [CD]
山梨鐐平は、79年に藤岡孝章(元・まりちゃんズ)、板垣秀雄(元・ウィークエンド)と男性3人によるバンド、Do!を結成、同じ年にシングル「Do! it 敦煌」でデビューを果たす。アルバム2枚、シングル6枚を残して81年に解散するとソロ活動を開始、ソングライターとしても水谷豊、長渕剛、今井美樹、織田裕二、西田ひかる、森口博子、吉沢秋絵、本田美奈子らに楽曲提供、特に吉沢には1985年からの数年間で30曲弱の楽曲を提供した。その後、CM曲やTV番組テーマ曲なども制作をする。92年にリリースされた「NICOLA」はソロ・アルバム通算5枚目のアルバム。作詞児島隆、作曲山梨鐐平、編曲渚十吾よる「シエスタ」(10人からなるキーボードやフルート等の編成による楽曲)などを収録。独自の美学を追求し、叙情的なメロディに乗せ、ヨーロッパの映画思わせる大人の余裕と色気が漂う音楽は地良く心に響く。
「黄昏には…」
「シエスタ」
「とても君が綺麗だから」
「君だけに優しい居場所」
難波弘之 Party Tonight [CD]
81年にリリースされた、難波弘之のセカンド・アルバム「 Party Tonight」RCAに遺跡した第1弾アルバムでもある。彼が山下達郎のライブ&レコーディング・メンバーになった頃、山下から「プログレとSF短編小説を合体させたアルバムを作ればいいのに」とアドヴァイスを受け、制作した作品。「パーティ・トゥナイト」というブックレットが付けられていて、アルバムのサウンドのコンセプトがこの短編小説を読むとよく理解できる。難波弘之の創り出すSFと音楽の関係性が溢れた好作品で、アルバム前半に緩急自在なシンフォニック・プログレサウンドを、後半に当時流行の大滝泳一、そして山下達郎に代表される日本製のポップなサウンドが上手に配置されたアルバム構成されている。山下達郎がメンバーに選んだ難波弘之の音楽に対するセンスの確かさを感じる事が出来る。「Party tonight」「City of silver gray」は山下達郎がコーラスとパーカッションで参加、グルーヴィーな曲で、山下達郎からの影響も感じられるのは興味深い。
「Party tonight」
「City of silver gray」